英語を「そのままの音」で聞けない理由 001

英語を「そのままの音」で聞けない理由 001

新しい言語を学ぶとき、たとえばフランス語や中国語など、まったく習ったことのない言語は「知らない音」として耳に入ってきます。
その場合、人は先入観なしに聞いたままを真似しようとするので、案外その音を自然にコピーできることがあります。たとえば中国語の声調(四声)や、フランス語の鼻母音などは、意味は理解できなくても「聞いたまま真似する」ことが比較的可能です。
子どもが音を模倣するのと同じようなプロセスが働くからです。

しかし英語に関しては、多くの日本人学習者にとって「すでに勉強した経験」があります。学校で習うローマ字的な読み方や、カタカナ英語の知識が先に頭の中に定着しているため、本来の音をそのまま受け取るのではなく、「自分が知っている音」に置き換えてしまうのです。
たとえば “water” を「ウォーター」と脳内で処理してしまい、実際の “wɔɾɚ” という英語の音が耳に届いても、それを正しく区別できなくなる現象が起きます。

ローマ字とカタカナが作る「フィルター」

ローマ字の読み方を小さい頃から習う日本人は、アルファベットを見ると自動的に日本語的な音で解釈してしまいます。「Aはア」「Eはエ」という既成のルールが強力なフィルターになっているため、英語本来の音価(たとえば A の [æ] や [eɪ])が入ってこないのです。
さらに、カタカナ英語も大きな影響を与えます。「シューズ」「コンピューター」「ミルク」など、すでに日本語化した形で知っている単語は、英語の音を聞いても自分の都合のよいカタカナの枠に押し込めて理解してしまいます。

これは「音を正しく聞いているつもりなのに、脳内で勝手に変換される」という現象で、いわば母語フィルターの一種です。勉強したからこそ起こる逆説的な障害とも言えるでしょう。

真似できないのは知識のせい?

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