「時間を限定しない」という現在完了(過去完了)の考え方(公開)

現在完了の説明を文法的にするのはネイティブでも難しいようです。特にアメリカ人は文法として説明するのが苦手で、イギリス人はどちらかというと得意です。というか、意識が高いです。
たとえば、
Someone had cried out somewhere nearby. (オリエント急行殺人事件より)
という過去完了の文があった場合、
「ちかくのどこかで誰かが叫んだ」と訳します。
英語でもこのニュアンスで間違いありません。
だとすると、
Someone cried out ~
でいいんじゃないかとなるわけです。
これは「完了」「finished」という現在完了・過去完了で起きるもので、アメリカ人は省略して過去形で使おうとするのです。その使い方が広まったゆえに、言語化して説明するのはちょっと難しいようです。
日本人もここにおいて、訳に差がないため、使い方として迷いがち。
では、どうして現在完了や過去完了の「完了」という使い方があるのでしょう?
先ほどの例文には、前の文があります。
Poirot woke in the middle of the night.
「ポアロは、真夜中に起きた」
こちらは過去形です。これは、過去完了にはなり得ません。
なぜかというと、「真夜中に」という時間の指定、意識があるからです。
このように、時間の意識がある場合、英語は現在形か過去形を使います。
特に、yesterday、at three、last April のように、具体的な過去の時点を指定する場合、英語では基本的に過去形を使います。
「昨日、本を買いに行った」
「3時にコーヒーを飲んだ」
「去年の4月にその人に会った」
これはすべて単なる過去形でいいのです。
例文では、ポアロが目を覚ましたのは、その前に誰かが叫んだからです。文としては順序が逆ですが、時系列としては、誰かが叫んで、ポアロが目を覚ましました。
そして、誰かが叫んだ時間は、誰も意識していないのです。
「過去形のあとに、さらに過去のことを述べる場合に大過去として使う」と私は習いましたが、そうではなくて、
ポアロが目を覚ました時点で、「すでに誰かが叫んでいた」というのが過去完了の「完了」の使い方です。
結果的に「過去形のあとに、さらに過去のことを述べる場合」となっていますが、そもそもの過去完了の完了とは、
「hadの時点で、誰かが行為を完了していた」というもの。
wokeとhadは過去形なので、同じ時間(真夜中)にあります。
ちょっと説明がややこしくなっていますが、時間の意識があるhadの時点(ポアロが起きたとき)に、別の行為であるcryを「持っていた」ということです。
hadがhaveになっても同じです。
Someone has cried out.
なら、「誰かが叫んだ」という訳になりますが、それを言った時までに、いつかはわからないけど、叫んだという意味です。
わからない、もしくは意識していない場合です。
たとえば、TVのニュースは今日の出来事を伝えますが、そのときまでに起こったことを伝えるという意味で、現在完了の完了が多く使われます。何時に起きたかを言う場合は、過去形になります。
The government has announced a new plan. 政府が新しい計画を発表しました。
この場合、何時に発表したかよりも、「今の時点で発表された」ということが大事です。
でも、時間をはっきり言うと、過去形になります。
The government announced a new plan at 10 a.m. 政府は午前10時に新しい計画を発表しました。
at 10 a.m. と時間を指定した瞬間、その出来事は過去の時間の中に置かれます。だから過去形になります。
「今日、コーヒーを3回飲んだ」という、回数のときも現在完了の完了です。
I’ve had three coffees today.
これは、それぞれ何時に飲んだかを言っていません。
朝に1杯、昼に1杯、夕方に1杯かもしれない。
でも、そこはどうでもいい。
大事なのは、今の時点までに3回飲んだということです。
だから現在完了です。
一番わかりやすいのは、「もう歯を磨いた?」というとき。
これは、いつ磨いたかではなくて、どちらかというと回数。1回は磨いたのか? という意味です。
なので、have you brushed your teeth yet? という疑問形になります。
「まだ磨いていない」と答えたいときは、
I haven’t brushed my teeth yet.
と答えます。
このときの日本語は現在完了の完了の特徴を捉えています。
英語の過去形で考えると、
I didn’t brush my teeth.
となり、「磨かなかった」という訳になり、意味が通りません。
なので、アメリカ人もここでは現在完了を使います。
I haven’t brushed my teeth yet.
ですが、やはり口語では、こんな使い方もします。
I didn’t brush my teeth yet.
と、yetをつけることで代用したりします。イギリス人にとっては「うーむ」となります。
Have you eaten yet? もう食べた?
をアメリカ人は
Did you eat yet?
と言うわけです。
さきほど述べたとおり、アメリカ人も使うときはしっかり現在完了を使います。
I haven’t brushed yet.
つまり、現在完了は「過去のことを言う形」ではありません。
過去に起きたことを、今の時点から見ている形です。
そして、その出来事の時間を限定しない。
これが現在完了の大事な感覚です。
時間を指定するなら、過去形。
I had coffee at three.
時間を指定せず、今までに起きたこととして言うなら、現在完了。
I’ve had three coffees today.
過去のある時点までに、すでに起きていたことなら、過去完了。
Someone had cried out somewhere nearby.
完了形とは、時間を細かく置く表現ではありません。
ある時点までに、その出来事がすでにこちら側に来ている。
その感覚を表す形なのです。
