推量のcouldは「でしょう」の訳が合う! could beは「かもしれない」より「かもよ!」(公開)

今まで何度もふれてきた推量のcouldの訳。
実際のシーンでは、「はず」のほうがしっくり来ると私は考えてきましたが、「かもしれない」だと言う人もいます。今回、決着します。
『オリエント急行殺人事件』から見てみましょう。
検視医のセリフ
At least three could have caused death.
日本語にするとどうでしょう。
学校英語なら、
「少なくとも3つが死因だったかもしれません」
となるでしょう。「可能性はあります」と言いたいんだろうけど、
このセリフを言っているのは検視医です。
遺体を目の前で調べた専門家としては少し弱い。
もし、こんな訳ならどうでしょう。
少なくとも3つは死因となり得ます。
これはとても自然です。
could が持っている
「成立する可能性がある」「成立できるかも」
という意味を、そのまま表しています。
「可能性はあるよ」です。
それを日本語らしくすると、
少なくとも3つが死因でしょう。
という訳もできます。
検視医として、
「現時点ではそう判断します」
というニュアンスになります。
「かもしれない」より、ずっと自信に満ちていて、「断定はできないけど、私の判断はこうだ」という確信めいたものを感じます。
「これって死因だと思いますか?」「でしょうねぇ」の「でしょう」です。
「これは死因じゃないんじゃないですか?」と聞かれれば、
「いや、おそらくこれが死因でしょう」となります。
では私の主張してきた「はず」なら、
「少なくとも3つが死因となったはずです」
となります。
正直、「でしょう」と親和性があって、なかなかいい。
「断定はできないけど、私の判断はこうだ」とも言えます。
でも、「はず」はmust be にも近いので、「でしょう」のほうがいいと思いました。
今回、
At least three could have caused death.
の訳で、
かもしれない
なり得る
でしょう
はずです
の中で一番しっくり来た訳は、「でしょう」。
「はず」も悪くないけど、「でしょう」がいい。
「でしょう」は「なりうる」「ありえる」の考え方から来た訳。
さて、過去に悩んだ例文を再度検証してみます。
映画プロメテウスより
ancient civilizations could have possibly known about it.
これ、専門家の意見として、
「古代文明はそれをおそらく知っていたはずだ」
よりも、
「古代文明はそれをおそらく知っていたでしょう」
がなかなかいい!
「知っていたということは、ありえますよ!」ですね。「ある」と考えることが、できますよ。という意味ですね。
プロメテウスじゃないですが、ガンガン行きます。
He could have canceled.
は、「彼はキャンセルしたでしょうね」でもいいし、専門家ではなく友達の会話なので、
「したはずよ」「したんじゃない?」でもいい。
「キャンセルしたっていうのもありえるね」ということです。
「そう考えることができるかも」ですね。
could be はけっこうややこい
「かもしれない」仲間である、
may be
との違いも見てみましょう。
例えば、
He may be at home.
なら、
家にいるかもしれない。
これが一番自然です。自信がない感じ。
一方、
He could be at home.
も、
家にいるかもしれない。
could beも、「かもしれない」の訳が合うけど、mayより可能性を信じてる。
なので、気分を乗せると「かもよ」の訳が合うのです。
以前に検証した例文を見てみます。
he could be a deadbeat dad.
「ダメ親父かもしれない」もセリフとしてOKですが、
「ダメ親父かもよ!」のほうが気持ちが乗ってていい。
Could be metal.
これは「メタルかもしれない」がいいですが、やはりニュアンスは積極的なので、
「メタルかもよ」がいいかも。
このように、could beのコンビは、「かもしれない」の訳も合いますが、mayより自信はあります。「これ、メタルっていうのもありますよ!」=「これメタルかもよ!」です。「可能性、あるよ!」
次の文はちょっと違って、
You could be more supportive.
これは、「もっとサポーティブになるのもありだよ」ですね。
「控えめな提案」というやつです。
詳しくはこちらの記事で
and she’s gonna meet editors and writers from every important magazine…
…and in a year, that could be me.
「彼女は(パリで)すごい雑誌の編集者やライターと会う。一年経てば、私よ」
これは「私かもよ」が正解。前回の記事では「はず」だと書きましたが、「かもよ」はしっくり来ます。
というわけで、
He could be at home.
は、「彼なら家にいるかもよ」です。「だから家に行ってみたら?」と続く感じ。
He may be at home. なら、「でもわからない。どうかな」と続く。
オリエント急行にはこんな文もあります。
Are there any other things that suggest two people might have committed this murder?
might は may の過去形で、この場合は時制ではなく推量。
「二人がこの殺人に関わったかもしれないことを示すものは他にありますか」
という意味に。「関わったであろう」ではなくて、やはり「かもしれない」です。
一方で、同じ作品にはこんなセリフもあります。
This cannot be Ratchett’s.
これは
「これはラチェットのものであるはずがない」
という強い否定。
cannot は単なる「できない」ではなく、「そんなことはあり得ない」という論理的な確信というイメージ。
- might は「その可能性はあるが、自信は低い」
- could は「十分あり得る」「成立する可能性がある」
- may は「可能性がある」と比較的中立
- must は「きっとそうに違いない」
- can’t / cannot は「そんなはずがない」
というように、推量の強さを表す役割も持っています。
映画や小説では、この推量の強さを読み取ることで、登場人物がどの程度確信しているのかが見えてきます。助動詞は、単なる文法項目ではなく、話し手の頭の中を映し出す言葉なのです。
最後に、仮定法。
You could have gone over right there.
これはちょっと怒りながら、さっき起こったことを言っているので、仮定法として「できる」の意味が入ります。
なので、
「車線変更できたでしょ!」
まとめます。
推量のcouldは、mayよりも可能性をより信じている推察のようです。
断定はしないけど、否定されれば「いやいや」となる。
死因の件では、「それは死因じゃないんじゃないですか?」と言われると、「いや、これが死因だと思いますよ」と、より強い口調になる。
なので、「でしょう」が口語としてはばっちりです。
過去完了と合わせるなら、「〜したのでしょう」
could beは「かもしれない」よりも可能性を信じていて、「かもよ!」。
He may be at home. の、「家にいるかもしれない」に対して、「家にはいないんじゃない?」と言われると、「ああ、そうかもね」で終わります。こだわりなし。執着なし。
He could be at home. は、「家にはいないんじゃない?」と言われると、「いやいや、家にいると思うけど」となるわけです。
わかりづらいcouldの文法解釈まとめ
【推量】
could 「(の)でしょう」「あり得る」
could be 「(いる、ある、なる)かもよ!(可能性は十分ある)」
【控えめな提案】
could 「するのもありだよ」
could be 「なるのもありだよ」
【仮定法】
仮定法のcould 「できるのに」「できたのに」
仮定法のcould be 「なれるのに」 「(いる、ある、なる)のに」
