フォーニックスは実際、難しいものです。


まもなく6歳になる娘は、ようやく「書く」ことに興味が湧いてきたようだ。

友人の6歳の男の子が、想像で漢字を書くのが面白いというので、うちは想像で英語の言葉を書くというのをやってみた。ようやくフォーニックス(アルファベットを実際に言葉で使うときの読み方)で少し読めるようになってきたので、想像で書くのもできるはず…。

そうして娘が知っている言葉を書いてみると、こんな感じになる。

brd

hav

Bk

上から、バード(Bird)、ハブ(have)、ブック(book)で、ご覧の通り、読み方としてはそんなに間違っていない。

All of usは、al ob as。

では、正解を伝えるときに、「どうしてiがいるの?」となる。

iもeも、確かに発音しない。


私も気になったので、毎週一回のプレスクールで先生に聞いてみた。すると、それは「サイレントワード」だからだという。私が「発音したらビアードになるね」と言ったら先生も娘も大笑いしていた。

それにしても、英語を知って何十年も、そんなことは気にしたことがなかった。気にしている人もいるかもしれない。でも私はしなかった。

これは、日本人が漢字というものを使っているからだと思う。漢字にはまったく発音の要素、記号がなく、複数の読み方がある。なのに、一度覚えるとそれ以外に読めない気分になる。

韓国語のハングルとはまったく違うものだ。

英語も実は漢字に近い部分がある。アルファベットの読み方と、文字を読むときの読み方が違う。

しかも、それぞれに何通りもの読み方があり、研究者によるとoには8通りも読み方があるという。

Cの読み方を教えているときに、cakeはケイクと教えたあとに、callが出てくるとケイ~と読もうとする。

そもそもシーなんだから、シエイクか、シアルじゃないのかとも思う。

All of asも、fをブと発音するという不思議にようやく気づいた。普通によめばオフだから、obのほうが正しいはずだ。

子どもは最初、漢字のように読み方自体を覚えて、フォーニクッス読みをあまりやらないと聞いたことがある。

ABCは歌だと子どもはすぐに覚えるし(一つひとつ読んでというとわからなかったりする)、絵本も記憶してしまうので読めてるように錯覚するが、実際は読めていない。

ABCの読み方をいくらやっても、単語の読みは違うのだから難しいし、漢字のように覚えるしかない。

一語一語分解したフォーニックスは、なかなか覚えられない。

実はアメリカでも小学校高学年で「読み」ができない生徒がけっこういるらしいが、それは英語の複雑な事情によるものだ。フォニクスをやっても、chとかislandとか、highといったものが出てくるとお手上げなのだ。

漢字が得意な日本人はhighの発音がハイだと知るとそれ以外に読めなくなり、ghに対して疑問を抱かなくなるが、実際はhiの部分を発音しているだけだ。islandのsはもちろん発音しないし、chはなぜかチと読む。

だが、小学校で読めない子どもに、はっきりと発音しない部分を記号で示し、oo(伸ばす音)の発音はこうだと記号で書くと読めるようになるという。

haveのeも発音しないけど、それを記号で示せばいいのだ。


思い返せば、たしかに中学生の私はカタカナ発音の英語をアルファベットに当てはめて、漢字のように記憶していっただけで、フォーニックスなんてまったく意識しなかった。だからなにも疑問に思わなかった。

もしフォーニックス読みをしたら、疑問だらけになるのだ。

逆に、フォーニックスを知っていると自分の発音をもとに書けるものもある。

娘はAndは発音から書けたし、

Allgadrは間違っていたけど、alligatorという正解を教えると、こんな文を書いた。

Alligator went to the past.

wentのwとtheはヒントを与えたが、to も past も間違えずに書けたのだ。

過去に読んだことのない文字も、そうやって書けたりするのがフォーニックス。

読むときも一つひとつの文字をぎこちなく読んでいるが、それがフォーニックス。

漢字読みのほうがいいのではないかと思うときがある。それがフォーニックス。