英語には、教材の音では得られないものがある。 001
ある人と話していて、「大人はそれほど子どもに向けてゆっくり話したりしない」という話になった。
本当に小さいころには赤んぼうに対するようなゆっくりとした話し方をするけれども、娘が通っているプレスクールの先生も、ネイティブの親たちも、娘に対して容赦ないスピードで話しかける。
なので、私も娘に「好きなYoutuberみたいに普通のスピードで話してもいいよ」と伝え、私もゆっくり話さず、もしかしたら聴きとれないんじゃないかと思うほどの塊感で話してみた。
感触としては、まったく問題なかった。
そして娘は、「本当にそのスピードで話していいの? 今までパパが駄目だって言ってたから話さなかったのに」といって超スピードで話しはじめた。
彼女が見ているYoutubeは、もの凄くはっきり話す子ども向けのものもあれば、完全に大人と同じスピードでカジュアルなものもある。
いずれにしろ教育用ではないので、あの独特のスピードと発音ではなく、くだけて早いものばかり聞いている。
これは本当にYoutube時代の賜だ。
日本では学校の先生は教育用の発音をするし、教材は教育用の発音しかしていない。映画やドラマは台詞化しているし、「教育を考えていない」日常の会話の音を聴けるのはYoutuberのおかげなのだ。
英語の発音を知りたいとき、今の時代に使えるのは電子辞書や教材用CD、ネット上の辞書だ。発音は発音記号に沿ったもので正しいのだが、正しすぎて実際の会話と乖離しているものがある。
それを防ぐためにもっと実際の会話に近い音を出す辞書的なサイトもあるが、完璧ではない。
たとえば、中央をあらわすセンターという言葉は電子辞書ではセンターと普通に発音する。英語の先生もそう発音するだろう。
だが、私が普段聴いている車を紹介するサイトでは
セナー
と発音している。
他にも、ゴントゥ、プローブリィと、勉強では聞いたことのない発音が数多く登場する。発音記号をしっかり勉強したときにはわからなかった長音も多い。
大人から見ると正直つまらないYoutubeチャンネルの寸劇を妻はやめさせようとするが、そのたびに言う。
「こういうくだらないのじゃないと、実際の英語の音は学べないよ」
子ども用の正しいYoutubeには、実際の英語がないのだ。
映画も台詞だし、はっきりわからないといけないものだから、実際のカジュアルな会話と違う。
ニュース番組でもない。
Youtubeには、留学して隣の席の誰かが話すような英語があるのだ。